薪火料理の基礎知識|飲食店で導入するメリットやポイントも解説
2025.11.03
- 飲食店の開業

近年、レストランやビストロを中心に「薪火料理」を導入する店舗が増えています。
「炎の香ばしさを生かした料理を提供したい」「他店と差別化を図りたい」と考えるオーナー・シェフの方も多いのではないでしょうか。
一方で、薪火を扱うには設備・環境づくりやスタッフ教育など、特有のノウハウが欠かせません。
この記事では飲食店経営者の方に向けて、薪火料理の基礎知識やメリット、実践する際に知っておきたいポイントを、薪火グリルを扱うメーカーの視点からわかりやすく解説します。
店舗の魅力を高める新しい調理スタイルを探している方は、ぜひ参考にしてみてください。
薪火料理の魅力
薪火(まきび)料理とは、薪を燃料として使用し、その炎や熾火(おきび)の熱で食材を調理する方法のことです。
もっとも原始的な調理法のひとつですが、近年では真空調理や分子ガストロノミーなど科学的アプローチとは対照的な“自然の火”の魅力が見直されています。
ここでは、薪火がもたらす「火力」と「調理法」という2つの観点から、その魅力を解説します。
火力
薪火の特徴は、200〜1,200℃という幅広い温度帯を自在に生み出せる点にあります。
炎が高く上がる直火では一気に高温で焼き上げられ、熾火の状態では安定した中温でじっくりと火を通せます。また、薪が燃える際に発生する遠赤外線によって、食材の内部まで均一に熱を伝えながら、水分と旨味を閉じ込めることが可能です。
外は香ばしく中はジューシーな仕上がりを実現できるのが、薪火ならではの魅力です。
調理法
薪火料理のもうひとつの魅力は、炎・熾火・煙といった“火の段階”を自在に使い分けられる多様な調理法にあります。
炎で炙れば表面に香ばしい焼き目をつけられ、熾火で焼けばじっくりと熱を伝えて素材の旨味を引き出せます。
料理によって焼き網やプレートを使い分けることで、火の距離や熱の伝わり方も自在に調整できます。
さらに、燃焼時に立ち上る煙で食材を燻せば、薪の種類ごとに異なる香りづけを楽しめます。
このように、火の表情を活かした多彩なアプローチこそが、薪火料理の奥深い魅力といえるでしょう。

薪火料理の基礎知識
薪火料理を実践するうえでは、使用する薪の種類や、火を扱う際に意識すべき基本要素を理解しておくことが重要です。
ここでは、薪ごとの特徴や香りの違い、そして調理の質を左右する「温度・位置・時間」の3要素について見ていきましょう。
薪の種類
薪火料理では、使用する薪の種類によって火力や香り、仕上がりが大きく変わります。
どの木を選ぶかは、料理の方向性を決める重要なポイントです。
一般的に、広葉樹は高温で長時間燃焼するため、安定した火力が必要な調理に適しています。
一方、こちらも薪としてよく使われる針葉樹は着火しやすい反面、燃焼時間が短く煙やススが出やすいため、主に着火用として使われます。
広葉樹の中でも、ブナやナラは火力が安定してクセがなく、薪火料理に適した定番材です。
また、りんごや桜など果樹系の広葉樹は、燃焼時の香りを生かして食材に風味を加えることができます。
いずれの薪も、十分に乾燥させてから使用することが基本です。
薪火調理の3つの要素「温度・位置・時間」
薪火調理では、火をどのように扱うかが仕上がりを左右する重要なポイントです。
その基本となるのが「温度・位置・時間」という3つの要素です。
・温度:薪の種類や量を調整して火力をコントロールします。自然の炎を一定に保つには経験と技術が求められます。
・位置:食材と熱源の距離によって加熱の強度が変化します。高い位置では遠赤外線でじっくり、低い位置では表面を一気に焼き上げることが可能です。
・時間:食材の厚みや狙う食感に応じて、片面ずつの焼成時間やひっくり返すタイミングを調整します。
一般的なグリルと異なり、調理方法にも特徴があるのが薪火料理です。そのため、この3つを的確に組み合わせることで、思い通りの焼き上がりが実現します。
飲食店で薪火料理を導入するメリット
薪火料理は設備や管理に手間がかかるため、導入のハードルが高いと感じる方も多いかもしれません。
しかし、その手間を上回るだけの価値と差別化効果をもたらすのが薪火の魅力です。
ここでは、薪火料理を取り入れることで得られる主なメリットを、品質・体験・発信力の3つに分けてご紹介します。
高品質な料理を提供できる
薪火料理のメリットとは、ガスや電気では再現できない味わいの深さと香ばしさです。
薪火による強い熱と遠赤外線は、素材の水分と旨味を閉じ込め、表面に独特の焼き色と香りを生み出します。こうした風味や仕上がりは、食通の心をつかむ“本格的な味”として評価されやすく、「薪火で焼いている」という工程そのものが料理のブランド価値を高める要素になります。
その結果、コース単価や提供価格に説得力を持たせやすくなるのも、経営面での特徴的な利点です。
ライブ感を演出できる
薪火料理は、食事そのものを“体験”として楽しませる力を持つものです。
オープンキッチンで炎が見える店舗ではもちろん、香りや音、立ちのぼる煙といった五感への刺激が、食事に特別な臨場感を与えます。たとえ厨房が客席から見えない構造でも、香ばしい煙の香りや焼き上がる音が伝わるだけで「今、ここで焼かれている」というリアリティが生まれます。
こうした「火の存在を感じる演出」は、他店にはないライブ感と記憶に残る食体験を生み、リピーターづくりにもつながります。

SNS映えや宣伝効果が期待できる
SNS運用に悩む飲食店オーナーは少なくありません。定期的な投稿や写真の工夫など、時間と手間がかかるのが現実です。
しかし、薪火料理はその調理シーン自体が「自然な発信素材」になるのが大きな強みです。
炎の立ち上がりや焼き上がる音、香ばしい煙といった要素には強い視覚的・聴覚的インパクトがあり、
写真や動画で伝えるだけで「本格的」「こだわりを感じる」といった印象を与えられます。
また、薪火調理を打ち出すこと自体が店舗のブランディング要素となり、他店との差別化や口コミ拡散にもつながります。

薪火料理のグリルを導入する際の5つのポイント
薪火料理は魅力的な一方で、導入には設備面や運用面での準備が欠かせません。特に、設置環境や法規制、スタッフ教育などを軽視すると、想定外のコストやトラブルにつながる可能性があります。
ここでは、導入を検討する際に知っておきたい5つの実務的ポイントを整理しました。あらかじめ把握しておくことで、導入後もスムーズに薪火グリルを活用できます。
設置場所とレイアウトを決める
薪火グリルを導入する際は、まず設置場所とレイアウトの検討が重要です。
一般的な厨房機器と違い、薪火は強い熱と煙を発生させるため、周囲の耐熱性や通気性を確保する必要があります。
まず、薪の投入や灰の処理など、日々の作業動線も考慮しなければなりません。調理中に薪を補充しやすい位置、スタッフが安全に移動できるスペースを確保しておくことが大切です。
さらに、メリットとして先ほどお伝えした「ライブ感」を活かしたいのなら、客席からの見え方や煙・熱の流れを意識するのも必要です。レイアウトにこだわると、炎を演出にしつつ快適な空間づくりが可能になります。
安全性・作業性・演出性をバランスよく設計することが、薪火グリルを最大限に活かすポイントです。

排煙・換気設備を設置する
薪火料理をする際に気を付けたいのが、煙と熱の管理です。
使用する薪の種類や含水率にもよりますが、一般的なガスや電気調理に比べるとはるかに多くの煙が発生します。
特に、火力を上げる際や新しい薪をくべた直後は、一時的に大量の白煙が立ち上がることもあります。
そのため、店内には十分な排煙・換気設備を整える必要があります。
実際の店舗では、煙を効率よく外へ逃がしながらも、薪火特有の香ばしい香りを店内にほどよく残せるよう、排気ダクトや換気扇の位置・出力を調整しています。
また、燃焼を安定させることで煙の発生を抑えられるため、火床の高さ調整や燃料管理の工夫も有効です。
近隣店舗や住宅への配慮も欠かせないため、排煙ダクトの設置位置や風向き、建物構造などを考慮し、厨房設計の段階から十分な通気計画を立てましょう。
消防法・建築基準法などを確認する
薪火グリルを導入する際は、消防法や建築基準法などの関連法規を必ず確認しておきましょう。薪火は明火を扱うため、一般的な厨房機器よりも厳しい防火基準が適用されます。
消防法では、店舗の規模や用途に応じて消火器や火災報知設備の設置が義務付けられており、薪火グリルを設置する際には「火気使用設備」として消防署への届出が必要になる場合があります。
また、建築基準法では火気を使用する室に不燃または準不燃の内装材を使用することが定められており、壁や天井の仕上げ、ダクトまわりの構造などに注意が必要です。
加えて、商業施設やテナントビルでは独自の防火基準や設置条件を設けている場合もあります。
トラブル防止のためにも、導入計画の段階で消防署やビル管理者に事前相談することをおすすめします。
スタッフのトレーニングを行う
薪火料理は、電気やガス調理と違って火の扱いに特別な知識と経験が求められます。
火起こしの手順、温度管理、薪の追加タイミング、消火時の安全対策など、いずれもトレーニングが必要です。
そのため、導入にあたっては「誰が火を扱うのか」を明確にし、担当者を中心としたチーム体制を整える意識をしておきましょう。
教育計画をあらかじめ立てておくと、導入もスムーズです。
長期的な薪火料理の運営を考えている場合、技術をマニュアル化・共有化しておくと安全に偏りを防げます。
1人のスタッフに依存してしまういわゆる「属人的な技術」に頼らないことが、薪火グリルを導入する店舗の成功を左右します。
薪の調達・保管方法を決める
最後は「安定調達」と「適切な保管体制」の設計です。
まずは、安定的な調達ですが、仕入先を確保しておきましょう。地域の薪専門業者やオンライン取引を活用し、必要量・価格・品質(乾燥具合)を契約レベルで固めておくと安心です。
次に、保管場所の確保です。店舗敷地内または近隣で、風通しが良く、雨水のかからない乾燥環境を用意することが望ましいです。薪は積み重ねて空気が通るようにし、地面から少し上げて設置することで湿気を防げます。
場所を確保する際には、運搬動線や安全性も考えるポイントです。
さらに、使用量とコスト管理も必要になります。乾燥状態の良くない薪を使うと燃焼効率が下がり、結果的に”薪量の増加”や”煙や火力トラブル”を招く可能性があります。
薪の含水率や仕入れ単価、在庫回転率などを簡単にチェックできる仕組みがあると十分です。
【業務用】おすすめの薪火グリル
これまで薪火料理の魅力や導入ポイントを解説してきましたが、ここからは実際に導入を検討している方に向けて、より具体的にイメージできるようフードトータルデザインの業務用薪火グリル「グリルステーション」をご紹介します。
グリルステーションは、薪火と炭火の併用が可能な本格的なグリル台です。
ロストル(焼き網)の高さをハンドルで調整できる可変機構を備え、火からの距離を自在にコントロールできます。直火で香ばしく炙る、余熱でじっくり火を通すなど、職人の技を誰でも再現できる設計です。
さらに、溶岩石を併用することで火力を安定させ、遠赤外線によるふっくらとした仕上がりを実現します。
デザイン面でも存在感があり、オープンキッチンでのライブ感演出にも最適です。
省スペース設計のため既存厨房にも導入しやすく、熱源は薪のほかガスや電気ヒーターにも対応しています。
実用性と演出力を兼ね備えた一台として、実店舗でも採用されている製品です。
詳細は、グリルステーション 火加減を操る、炭火焼台・薪火グリラーで確認できます。

薪火グリルのことならフードトータルデザインにご相談ください
薪火料理は、素材の魅力を最大限に引き出し、店舗の個性を目立たせる調理スタイルです。
ただし、導入には設備選定からレイアウト設計、スタッフ教育まで幅広い準備が必要になります。不安な場合は、導入実績のある専門業者に相談しながら進めるのがおすすめです。
スマート・イノベィションズが展開するフードトータルデザインでは、薪火グリル「グリルステーション」だけでなく、厨房機器全体のプランニングや設計支援もトータルで対応しています。
必要に応じてオペレーション構築やメニュー開発のサポートも可能です。
薪火料理の導入を検討されている方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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この記事を書いた人
販売管理部 取締役
住宅メーカーでの接客・ゾーニング・CAD提案を経て、厨房業界へ転身。以後10年にわたり、大手チェーン店案件を中心に現場調査→プランニング→積算→施工までを一気通貫で担当してきました。設計・施工・運用の全工程を把握したうえで、導入計画と現場オペレーションの整合を取ることを重視しています。
現在は自社製品の販売を統括。お客様の「うまく言語化されていない本音や制約条件」を丁寧に引き出し、レイアウト最適化、導入コストとスケジュール、運用負荷、契約・リスクの確認ポイントまで踏み込んで提案するのが持ち味です。法学部で培った合意形成・契約視点を背景に、コラムでは導入・設置・運用・コスト試算の実務的観点を中心に、現場で役立つ判断基準を解説します。
「ご用聞きではなく、潜在課題の言語化と解決」が信条。プライベートでは釣りとアガベ栽培に熱中し、環境条件の管理や段取りの大切さを日々の仕事に生かしています。

